事業継続力強化計画とは?策定する5つのメリットを解説

皆さんは事業継続力強化計画という言葉をご存じでしょうか?
事業継続力強化計画とは、中小企業や小規模事業者などが防災・減災に対する事前準備を取り決めるものです。
中小企業などがこの事業継続力強化計画を経済産業大臣に申請し、認定されることで、金融支援や税制優遇、ものづくり補助金の加点など様々なメリットを受けることができます。

この制度は、2019年7月16日に施行された中小企業強靭化法にあわせスタートしました。2022年12月末時点で、累計50,153件もの認定がされています。
この背景には、九州や中部地方に甚大な被害をもたらした「令和2年7月豪雨」などによって、多くの中小企業が被災したことにあると言われています。
これらの被害により、中小企業強靭化法や事業継続力強化計画などの必要性が浮き彫りになったと思われます。
そこでこの記事では、「事業継続力強化計画とは何か、策定し認定を受ける5つのメリット」などについて解説します。

参考:中小企業庁「事業継続力強化計画」

事業継続力強化計画とは?

事業継続力強化計画とは、中小企業や小規模事業者などが防災・減災についての事前対策を計画し、経済産業大臣の認定を受ける制度のことです。1つの企業が単独でおこなう単独型と、複数の企業が連携しておこなう連携型があります。

地震や台風などの自然災害の多い日本では、中小企業などが被害を受けることも珍しくありません。また、今回おこった新型コロナウイルスなどの感染症への対応も必要になります。

事業継続力強化計画の策定は、中小企業などが災害などに対する危機対応力を高めるのに、非常に重要な役割をはたしています。

また、事業継続力強化計画を策定する際に、中小企業などの様々なリスク対策を考えることによって、経営課題の発見など経営改善にもつながります。

事業継続力強化計画を策定する5つのメリット

事業継続力強化計画を策定し認定された企業は、様々なメリットを受けることができます。主なメリットは、以下の5つになります。

  1. 融資の金利優遇と信用保証枠の拡大など金融支援
  2. 導入した防災設備などに対する税制措置
  3. ものづくり補助金などの加点措置
  4. 中小企業庁ホームページでの認定を受けた企業としての公表
  5. 認定企業ロゴマークが使用できる

融資の金利優遇と信用保証枠の拡大など金融支援

事業継続力強化計画の認定を受けると、様々な角度からの金融支援を受けることができます。具体的な支援の内容や対象者について解説します。

1)金融支援の内容

①日本政策金融公庫による融資金利を0.9%引き下げ

事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業などは、設備投資に必要な資金を低金利で借りることができます。ただし、融資の利用にあたっては、別途審査が必要になりますのでご注意ください。

貸付金利 設備投資については基準金利から0.9%引き下げ、運転資金については基準金利
貸付限度額 億2,000万円まで、うち運転資金は2億5,000万円まで。設備投資において、金利0.9%引き下げになるのは4億円まで
貸付期間 設備投資は20年以内、長期運転資金は7年以内、据置期間2年以内

②信用保証協会による信用保証を別枠で受けられる

中小企業などは事業継続力強化計画の実施で設備投資する際に、民間金融機関から融資を受ける場合には、信用保証協会による信用保証を別枠で受けられます。

通常枠 別枠
普通 2億円(組合4億円) 2億円(組合4億円)
無担保 8,000万円 8,000万円
特別小口 2,000万円 2,000万円
新事業開拓 2億円→3億円(組合4億円→6億円)
海外投資関係 2億円→3億円(組合4億円→6億円)

③資本金3億円以上の株式会社も投資を受けられる

事業継続力強化計画の認定を受けた場合、資本金が3億円を超える株式会社も、計画の実行にあたり「中小企業投資育成株式会社」からの投資を受けることが可能になります。
※通常は資本金3億円以下の株式会社

④日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット

事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業者(国内親会社)の海外支店または海外子会社が、日本政策金融公庫が提携する海外金融機関から現地通貨建ての融資を受ける場合に、債務の保証を受けることができます。

保証限度額は1法人あたり最大4億5,000万円で、融資期間は1~5年となります。

2)対象者

事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を取得した中小企業者が対象となります。
認定を受けられる会社の規模は、以下のようになります。資本金等または従業員数が当てはまる場合に対象となります。

業種分類 資本金または出資額 常用の従業員数
製造業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業など 3億円以下 300人以下
旅館業 5千万円以下 200人以下

①および②の普通保険、無担保保険については中小企業とともに、連携事業継続力強化計画にかかる取り組みを行う中堅企業者(資本金が10億円以下または従業員数2,000人以下の法人)も法で定めるものに限り対象になります。

導入した防災設備などに対する税制措置

税制措置の内容や対象者、適用対象期間、対象設備などについて解説します。

1)税制措置の内容

認定を受けた日から約1年以内に、計画に記載した対象設備を取得して事業を実施した場合に、特別償却20%が適用されます。通常の減価償却と別枠で設置年度に適用されます。

通常の減価償却が5%の場合には、設置年度は5%+20%=25%が償却されます。
ただし、特別償却は将来発生する減価償却費を前倒しで当期の費用にするものです。経費として計上できる総額は同じになりますのでご注意ください。
2023年4月1日以降に取得した設備は18%となります。

また、「令和5年度税制改正の大綱」で以下の見直しが行われました。

  • 適用期限を2年延長(消費税についても同様とする)
  • 対象資産に耐震装置を加える
  • 2025年4月1日以降は16%

2)対象者

青色申告書を提出する中小企業者などで資本金などが1億円以下の法人。資本金などを有しない法人は常用従業員1,000人以下。
ただし大企業の子会社や、前3事業年度の平均所得金額が15億円を超える法人などは除きます。

3)適用対象期間

認定を受けてから約1年以内(認定を受けた日から同日以後1年を経過する日まで)

4)対象設備

自然災害が事業活動に与える影響を軽減する減価償却資産のうち、対象となる機械および装置、器具および備品、建物付帯設備など。

参考:財務省「令和5年度税制改正の大綱」

ものづくり補助金などの加点措置

事業継続力強化計画を認定された中小企業などは、ものづくり補助金の審査の際に加点措置を受けることができます。これにより補助金の採択において優位になります。
2023年1月現在で加点対象の補助金は、ものづくり補助金のみとなっています。

参考:ものづくり補助金総合サイト

中小企業庁ホームページで認定企業として公表

事業継続力強化計画の認定を受けると、中小企業庁のホームページに企業名と企業ホームページURLが公表されます。
これにより、社会的信用力の向上が期待できます。

認定企業ロゴマークが使用できる

事業継続力強化計画の認定を受けた企業は、認定ロゴを使用することができるようになります。

ホームページや企業パンフレット、名刺などにも使用することができます。
しっかりとした企業としてのイメージを付けることができ、営業促進などにも利用できます。

事業継続力強化計画のメリットまとめ

事業継続力強化計画を策定して認定を受けることには、様々なメリットがあります。
融資金利の優遇や税制支援など、事業運営上で非常に有利になるものも多くあります。

しかし本当のメリットは、企業として災害や感染症拡大などに対する危機対応力を強化できることにあるのではないでしょうか。

また、企業としての様々なリスクを考え対策することにより、経営課題も明確化されます。事業継続力強化計画の策定を通じて、企業の経営改善も検討されてはいかがでしょうか。

ただし、事業継続力強化計画の策定や、認定後の運用には複雑な手続きも多くあります。疑問点や困りごとなどありましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください

BESO 吉川 昌宏

明るく正しい納税をお手伝いします!!

  • twitter
  • facebook
  • hatena
  • RSS